HOME シンポジウム&セミナー 第15回市民公開シンポジウム福間誠之講演要旨

第15回市民公開シンポジウム 医学・医療の過去・現在・未来 講演(3)要旨

講演(3)脳死より平穏死(自然死)福間誠之

福間誠之  脳神経外科医として診療に従事するようになった頃、1969年に日本で最初の心臓移植手術がおこなわれ、移植のために脳死患者が提供者となった。その後脳死判定の確実性や脳死は人の死かという問題が議論され、脳神経を専門とする医師として関心を持つようになった。人の死をめぐる問題で法律、宗教、倫理など医学以外の専門分野の人も議論に加わり、1992年に総理大臣諮問機関の「脳死臨調」より最終報告書が出された。1997年には臓器移植法が成立し、1999年に成立後最初の心臓移植が行われた。医療技術の進歩により脳死状態を長期間維持することが可能となり、脳死状態の妊婦を胎児が体外生存可能となるまで維持して出産させたり、1ヶ月以上最長20年近くも維持して慢性脳死と言われる患者もでて、人の死は何時なのか分からなくなる。
 脳に重篤な障害を受けた患者の自発呼吸は回復して人工呼吸器は必要でなくなっても意識の回復しない持続植物状態患者となり社会的問題となった。超高齢社会となった日本で増加する認知症患者は末期になると自分では何もできない寝たきり状態となり、自分で食事をすることが出来なくなり全面的な介助が必要となるが、その時の対応が問題となる。経管栄養により延命が可能であるが、認知機能は回復することなく終末を迎える。
 人は年齢と共に老化が進み、病気に対する回復力も衰えて何時か死を迎えるが、どのような最期を迎えるかあらかじめ自分の意思表示をしておくことが大切となる。そのために尊厳死協会のリビングウイルやオレゴン州のPOLST、モーロイ医師のLet me decideなどが提案されている。特別養護老人ホームには自宅で介護が出来なくなった高齢者が入所し、ほとんどの人にとって終の棲家となり、余命が少ないと思われる頃に家族に延命措置に関する指示・同意書に署名をもらい、無理な延命はせずに自然な死としての平穏死が迎えられるようにしている。
 誰もが迎えなければならない終末期にどのようなケアを希望するかあらかじめ自分の意思表示をしておくのが望ましい。