HOME シンポジウム&セミナー 第15回市民公開シンポジウム櫻井 勇講演要旨

第15回市民公開シンポジウム 医学・医療の過去・現在・未来 講演(1)要旨

講演(1)作家遠藤周作さんと上智大学デーケン先生に学んだこと 櫻井 勇

櫻井 勇  今日は医療に関する具体的なお話は致しません。私は数十年医学教育に携っておりました。その間、昭和58年頃に当時の医学部長から入学者選抜制度、教育・学習カリキュラムそして教授選考制度の改革を行うよう指示され、それを数十年やってきた経験の中で、強烈な印象を受けたお二人のことをお話ししたいと思います。
 作家の遠藤周作さんはカトリック信者で、医療機関とそこで働く医療者についてしばしばエッセイを発表しておられました。それはあくまでも患者さんの視点からの医療改革のお話でありました。もう一人の方は上智大学(哲学)のデーケン先生です。デーケン先生はカトリックの神父様でもあり、死学Death Education そして後には悲嘆教育Grief Educationを広められた方です。
 医学部一年生のカリキュラムに「医学序論」を入れ、学外からも多くの方々に講義や講演もして頂きました。
 遠藤周作さんのお話のなかで最も強烈なお話を致します。それは、「お友達が末期がんで入院されていたのをお見舞いに行かれ、帰路病室の明かりを見た時、日本では病院は医療機関であると同時に教会でもあるのだ」と言われました。私はその時、医者や看護師は医療者であると同時に宗教者でもあると言われているのではないかと感じ、大きなショックを受けました。デーケン先生のDeath Education のお話も完治の見込みがない末期がんの患者さんに対する心のケアを医療者に気づかせたいとの願いからの啓蒙活動であると気づかされましたし、教育者側はそのような心を持つ医師を育成しなければならないのだと強く感じました。私が半生を過ごさせてもらった大学の医学部は現在まで病める人達のために骨身惜しまず働く医師の育成を教育理念として継続して保持し、教育に当たっている源はこのお二人の影響にあるのだと思っています。