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第15回市民公開シンポジウム 医学・医療の過去・現在・未来 講演(4)要旨

講演(4)安心の医療のために「医」を学ぼう―医療制度の未来 徳永力雄

徳永力雄 1.人類は大きな転換点に向き合っている。

 情報技術の想像を超える進歩が、社会、文化、産業、環境を、生活や政治、健康情報をも、地球規模で変えている。医療では、がん治療、感染症、認知症、うつ・ストレス、など多くの問題があり、医療制度では、医療費・介護費の増加、年金制度の脆弱化が懸念されている。一方で新薬・健康寿命の延伸・遺伝子治療・個別化医療・AI(人工知能)の活用など、未来への期待も大きい。
 新しい医療技術の社会化は、時間とコストがかかる。とりわけ市場原理主義社会への新技術の拙速な適用は、医療費の高騰をもたらす。
 医療の模範国といわれるわが国でも、技術進歩に伴う医療コストや高齢者の医療費の現状に対して、公的医療保険制度の維持に警鐘が鳴らされている。日本の社会保障費は、2015年現在約112兆円で国家の一般会計予算の33%を占め、うち医療が36%、年金が47%、介護等が17%で、国民はその約42%を負担している。今後、外国資本の流入や医療費・介護費が増えれば、給付を減らすか負担を増やすかしかない。しかし医療制度は極めて高度かつ複雑な国家インフラでその改革は一朝一夕には達成できない。
 保険料を負担して良質の医療を期待している国民は、日本の医療制度を信じて、メディア依存や自己流で目前の恩恵を享受していてよいのであろうか。
 
2、医学や医療について、また人間の本性を論ずる哲学や道徳を学ぼう。

 明治維新後の教育制度以来、高度な専門領域の教育は大学などの高等教育機関に委ねられてきた。中でも医学は、初等教育においてはむしろ回避され、系統的な教育は大学の医学部だけで実施されてきた。
現在、学校教育での病気や人体生理の学習は、保健体育や理科の生物、家庭科など、限られた教科や分野でしかも短時間で行われている。それも、大学入試科目との関係で深い学習は疎かである。百年前には予想できなかった医学医療の進歩と社会における価値の対象の変化があるとはいえ、現代では個々人にとって医療は最も身近で重要な問題となっている。そのための国民教育が必ずしも適切に実施されていないことに気付くべきである。
 商業主義が席巻し玉石混交の健康情報があふれ、情報伝達が複雑化して真実が見えにくい社会が当分続くであろう。知識と物品、各種サービスが氾濫する社会で、正しい知識に基づいて適切な判断と選択をなし適切な行動をしてこそ、社会制度がバランスよく発展し、ひいては人類の福祉の向上が達成できる。
そのためには、最も身近な「自分の体と病気」について知識を磨くために、自分自身でまた学校や社会で系統的に学ぶことが大切である。